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プロダクトが主役のSaaS企業で、BXデザイナーに何ができるのか?

こんにちは!ユーザベースでデザイナーをしている三宅佑樹( @Yuki_Miyake )と申します。

私は入社以来、B2B事業向け顧客戦略プラットフォームの「FORCAS」というSaaS事業のBX(Brand Experience)デザインを中心に担当してきました(最近はUIデザインにも少し携わっています)。

SaaS企業のデザインというと、UIやUXを思い浮かべる方が多いと思いますが、弊社のようにBXデザインやコミュニケーションデザインを専門に担当するデザイナーを置く企業も最近は増えてきているのではないでしょうか。

今回はSaaS企業におけるBXデザイナーの業務内容や役割、社内にBXデザイナーを置く意義について書いてみたいと思います。あわせて、FORCASのBXデザインの実際の制作物もいくつかご紹介させていただきます。

BXデザイナーの担当範囲

SPEEDA・FORCAS・INITIALといったSaaSプロダクトに関するデザイン業務を担うユーザベース SaaS Design Division -DESIGN BASE- において、BXデザイナーが担当している制作物には以下のようなものが挙げられます。

<ブランディング>
ロゴ / 各種デザイン物に関するガイドライン など

<マーケティング>
イベント・セミナーの告知バナー / 資料DLに誘導する広告バナー / ホワイトペーパー / 導入事例 / イベントレポート / サービス紹介資料 / 紙のパンフレット類 / サービスサイト / LP / オンラインイベント用のZoom背景 / オンラインイベント用のスライドやテロップ / オフラインイベントの空間演出・会場装飾 / 展示会のブース / ノベルティ など

<カスタマーサクセス(CS)>
CS活動で使用する資料 / 操作方法解説用の動画 / ユーザーイベントの空間演出・会場装飾 / ノベルティ など

<セールス>
セールス活動で使用する資料 など

<HR>
採用イベントの告知バナー / 採用イベントのスライド・テロップ / 採用活動のための事業紹介資料 など

<PR>
プレスリリースのカバー画像・記事内画像 など

<プロダクト> (FORCAS除く)
記事や冊子形式のコンテンツのデザイン
※これらを専門に担当するデザイナーをコンテンツデザイナーと呼ぶこともある

<デザイン組織>
デザイン組織のブランディング用のビジュアルやグッズ など

大量にありますね(笑) さらに現在、各プロダクトでデザインシステムの構築プロジェクトも走っており、ブランドのトンマナへの深い理解や造形に対する繊細な感覚といったBXデザイナーならではの強みを活かしながら、UIデザイナーと共同でデザイン原則の策定や、色、書体、アイコンなどの整備も進めています。

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FORCAS オフランイベント/カンファレンスの会場空間演出
一昨年まではオフラインでのイベントも開催していたため、会場の空間演出もBXデザインの担当業務でした。写真上は虎ノ門ヒルズで開催したカンファレンス「SaaSway」より。展示ブースに囲まれた中央のスペースを来場者同士が懇親を深めるためのミートアップエリアとし、植物や家具を配置。通常の展示会では見ることのない空間演出で、来場者に驚きとワクワクをお届けすることができました。
Graphic Design & Space Design Direction: Yuki Miyake
Creative Direction: Jumpei Sakai

BXデザイナーの業務内容と求められる役割

弊社のBXデザイナーの業務内容は、大まかに分けると以下の3つです。

・ブランドのAs-Is / To-Beについて整理する
・ブランド展開のためのガイドラインをつくる
・コミュニケーションに必要な個々の制作物をデザインする

事業成長の観点で考えると、以下の3つの顧客の行動を後押しすることがBXデザイナーに求められる役割だと思います。

① 導入検討の選択肢に入れる
② 利用契約を締結する
③ 
利用契約を更新する

顧客に①〜③の行動をとっていただければ事業は成長していくので、BXデザイナーもこれらの行動を喚起することが求められる役割になります。

①〜③の行動を喚起するためには以下の3つの顧客の状態を作る必要があります。AIDMA/AISASモデルなどもありますが、B2B SaaSのBXデザイン業務に限って言えば、これくらいシンプルに考えてもよいような気がしています。

1) 認知 →①検討に繋がる
2) 信頼 →①検討+②契約に繋がる
3) 愛着 →③更新に繋がる

1)〜3)の状態を作るために、BXデザイナーが日々のデザイン業務を行う上で特に意識すべき重要なポイントは以下の3つではないかと思います。

A) 差別化 →1)認知+3)愛着に繋がる
・他の会社と同じような見せ方をしていると目立つことがないため、存在を認識されづらくなります。
・「格好良さ」「愛らしさ」「新しさ」「美しさ」など何らかのプラスの特徴が他よりも際立っていることで憧れや愛着などの感情を喚起し、「ファン」化しやすくなります。BXデザイナーは自らの造形力でこうした特徴付けを行う必要があります。

B) 信頼性 →2)信頼+3)愛着に繋がる
・SaaSは一回売ったら終わりではなく、利用が始まると機密性の高い社内のデータが大量に入力されたり、業務インフラとして組み込まれるため、信頼性が非常に重要です。
・造形のクオリティの高さが信頼性に非常に大きく影響します。

C) 一貫性 →1)認知+2)信頼+3)愛着に繋がる
・事業戦略(ターゲット等)や当該制作物で伝えたいメッセージと表現が合致していることが実効性のあるデザインを作る上で最も重要です。
・統一感のある独自の世界観を築いていくためには、BXデザイン全体のトンマナ、UIのスタイリングとの一貫性を常に意識することが大切です。

論理的思考力と造形表現力を駆使し、これらA)〜C)をどれぐらい高いレベルで実現できるか、これがBXデザイナーの真価が問われるところではないかと思います。

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FORCAS オンラインユーザー会 Miroを活用した会場デザイン
FORCASのユーザーさんを招待して新機能や製品ロードマップの発表、ユーザーさん同士やFORCASメンバーとの交流などを行う「ユーザー会」。2021年はオンラインで開催。線や色が塗れる、初めて使う人でも直感的に操作できる、などの理由からMiroを使用し、音楽フェスやキャンプ場のようなワクワク感のある会場をオンライン上に作り上げました。Miroではカーソルを動かすと名前のタグが移動するため、大量(大人数)のカーソルが画面上を動き回ることでイベントの熱狂を可視化できると考えました。
Art Direction & Design: Takashi Ito
Creative Direction: Yuki Miyake

BXデザイナーを社内に置く意義

SaaS企業にとってはプロダクトの利用価値が何よりも大事というのはもちろんですが、プロダクトを磨き上げてもその価値を的確に伝えることができないと、大きな機会損失に繋がってしまいます。まだ契約をしていない=プロダクトに触れていない潜在顧客とのコミュニケーションや、既存顧客とのプロダクト利用時以外のコミュニケーションが事業に与える影響は大きく、それらを担うBXデザインはやはり軽視できない領域と言えるのではないかと思います。

BXデザイナーを外部ではなく社内に置くメリットや意義としては例えば以下のような点が挙げられます。

a) 迅速な意思疎通
:これは分かりやすいメリットですね。社内コミュニケーションツールを通じて頻繁にやりとりをしたり、ミーティングをすぐに開いて素早く意思疎通を行うことができます。

b) 的確な事業理解
:事業戦略やプロダクトの特性、今のマーケット環境や社内の数値進捗などをデザイナーが的確に理解・認識することで、コミュニケーションが円滑になったり、目的を的確に捉えたデザインを生み出しやすくなります。これは大量かつコンフィデンシャルな情報にも触れられる社内の方が圧倒的にやりやすいと思います。

c) 繊細な感覚共有
:ブランドの見せ方や造形面でどこまでがOKでどこからがNGかといった繊細な感覚やニュアンスを共有するには、やはり毎日同じ会社の空気を吸って頻繁にコミュニケーションをとることが何よりも効果的と言えます。

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FORCAS セミナー告知バナー
バナーの制作では「ブランディング観点(ブランドの見せ方)」「マーケティング観点(集客効果)」「デザイン観点(造形のクオリティ)」の3つの観点を大切にしています。入社以来、CMOの酒居と対話を重ねながら感覚を共有してきた「FORCASらしさ」、その時々のFORCAS事業や当該セミナーのターゲット、近接する業種の他社企業の広告に埋もれない独自性、この3点は特に強く意識して制作しています。
Art Direction & Design: Yuki Miyake
Creative Direction: Jumpei Sakai

採用面への影響

採用活動とマーケティング活動は近い部分があるというのはしばしば言われることですが、BXデザインを通じて形成される会社や事業のイメージが採用面へもたらす影響は決して小さくないのではないかと思います。

デザイナー採用が一番顕著で、デザイナーが就職先・転職先を選ぶ際には必ずその企業が展開しているデザインのレベルを見て「デザインを大事にしている会社かどうか=自分の力が活かせる会社か」を判断しています。特に企業のロゴやHPのデザインのクオリティが一番分かりやすい判断材料になります。

また昨今は、ビジネスサイドをはじめとする他の職種についても、その企業がどれくらい先進的で時代を読むセンスがありそうか、柔軟性や創造性のある社風か、信頼性はどうかといったことを、企業が展開するデザインのクオリティから感じ取り、判断材料にしている人がどんどん増えてきているのではないかと思います。

こうした採用面への影響も、BXデザインの価値や効果を語る上で欠かせないポイントです。

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いかがでしたでしょうか。

この記事がSaaS事業のブランディング・マーケティング・デザインに関心をお持ち方の参考になれば幸いです。

ユーザベース SaaS Design Division -DESIGN BASE-では、現在BXデザイナー・UIデザイナーを募集中です。ご興味のあるデザイナーの方はぜひこちらをご覧ください!

お読みいただき、ありがとうございました!

Text: Yuki Miyake ( @yuki_miyake )
Cover Design: Kurumi Fujiwara

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